銀雨にて生息してる姉弟と、背後の徒然雑記。コメントはお気軽にどぞ
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ぼーりんぐ。
こんにちは、縁樹です。

随分前に書くといって忘れていたお話を一つ。
関係者はお持ち帰りOKですよーと言って見ます。(笑)



 某月某日。
 太陽の光がさんさんと降り注ぐ、夏にはまだ少しだけ早い初夏の晴天の日。
 少々汗ばむ陽気の中、彼等は居た。

「うーい、悪い悪い。遅くなった」
 此花・樹(華護人・b01365)は片手をあげながら小走りに目的の場所へとやってきた。
「遅くなってごめんなさいね皆さん、電車が5分遅れてたみたいで…」
 樹の後ろから此花・縁樹(砂の薔薇・b01304)が少し息を切らせて走ってくる。
 その言葉に海原・七海(中学生白燐蟲使い・b05396)が手をひらひらとさせて笑った。
「大丈夫だよー、義兄さま義姉さま」
「そうそう、樹達より遅いのがまだ居るから」
 うんうん、と頷く蒼劉・海月(漆黒の海・b02285)に樹達は首を傾げるが、周りを見渡し手を鳴らす。
「あ、冥架さんがまだなんですね」
「せーいかい、だから気にしなくても良いよー」
 寝てんじゃねーの?と時計を見ながら海月が言えば、かも知れねーなと樹が笑う。
 連絡を取ってみましょうか?と縁樹が携帯を取り出しメールの文字を打っていると、遠くから。
「ぎゃー!スマン!寝坊しよった!」
 全力疾走してきたのか、息を切らして冥架・椋(赤と黒の狭間・b10692)が駆け込んできた。
 七海が遅い!と一言言えば、皆も面白がって椋へと声を掛けていく。
「だー!だからスマン言うとるやろが俺は!」
「それ謝る人の態度じゃないよねー義姉さま?」
「ですよねぇ、義妹様?」
 小首を傾げて、ねーっと言う七海に、縁樹も笑って同じように返す。
「つーかお前悪いとしか言ってねーじゃん」
「ぐっ」
 その様子に海月はにやにやと笑うと、言葉に詰まった椋のバツの悪そうな顔。
「ゴメンナサイ」
「ふっふーん、それで良いのだよそれで」
 小さく謝れば七海が満足そうに言った。
 その様子が可笑しかったのか、縁樹がくすくすと笑い、樹も笑い出す。
 一人が笑えば皆も笑うもので、堪え切れなかったのか七海がぷっと小さく吹き出すと椋も海月も声を上げて笑った。
 ひとしきり皆で笑った後、縁樹が腕時計に視線を落しながら言った。
「はい、それじゃあ時間もないことですし」
「ボーリング行くか」
 誰かが言った声に異議を唱える者もなく、皆は軽い足取りで歩き出したのだ。



 カコン、と小さな音も響けば、ガコン!と豪快な音もあちらこちらから響くボーリング場。
「レーン数どーする?」
「2つだろ? 5人だし、1つじゃ回転遅いしさ」
 申込用紙にカリカリと樹がボールペンを走らせながら言う。
 それに海月が答えながら、縁樹と七海の方を向いた。
「男子、女子で分かれようと思うんだけどさ、それで良いか?」
「あ、構いませんよー」
「うん、ボクもOK」
 ガーター無しにするか?と冗談めかして言う椋に、七海がなめんなバカ!と思いっ切り椋の足を踏み付けた。
 悶える椋を尻目に、縁樹も笑いながら大丈夫ですよーと言った。
「…んー、じゃあこれでおっけーっと」
 ふんふんと鼻歌を歌いながら、樹が用紙を提出しにフロントへ行く。
「一般料金で宜しいですか?」
「高校生4人と中学生1人で」
「それでは、学生証を確認させて下さい」
 言われるままに皆は学生証を見せ、料金を払うとフロントからレーンの番号札を受け取った。
「なぁなぁ」
 ボールを選びながら椋が言う。
「どうせやから、スコア一番低かった奴ジュース奢りとかどや? きっとおもろいで」
「お、いーなそれ」
「それは俺達男だけ?女子勢も混ざっとく?」
 海月が問えば、うーんと縁樹は考え込んで。
「最近ボーリングやってませんし、良いスコア出す自信もないので私は止めときますね」
「あ、じゃあボクは混ざるー。義姉さまの分も頑張るからッ」
「はい、頑張って下さいね義妹様」
 メラメラと闘志を燃やす七海に、縁樹はにっこりと笑った。

「ちょ、おま、樹…!」
「オイコラ待てや!いっちゃん?!」
「ん?」
 指定レーンに付いた所で、不意に海月と椋が抗議の声を上げた。
 何か可笑しいことでもやったか俺は?とばかりに樹は首を傾げる。
 縁樹と七海が何事だと画面を見れば、思わず噴出した。
「こんな所でもクラゲっていれることないだろー?!」
「何や、アカイノって…!」
「あーウルセーウルセー、さっさと始めっぞ」
 拒否権なんて認めるか。
 ギャーギャーと騒ぎ立てる二人を無視して、樹はボールを手に取り滑るようにレーンへと投げた。
 勢い良く滑るボールは、ガコンッと爽快な音を立ててピンを倒す。
「げっ、2本残ってら」
 ピンのセッティングが終わったのを確認したのち、二投目を投げるがそれはピンの横をすり抜けると暗い穴へと吸い込まれた。
 あーぁと悔しがる樹を尻目に、スコアはきっちり8が明記される。
「どんまーいっちゃん。ほな、次俺なー」
 席に戻る樹と入れ違いに椋がレーン前に立ち、ボールを構えた。
 そしてふと、七海は自分の義姉がちょっとだけ後ろに下がったのを見て首を傾げる。
「…なんで下がるの義姉さま」
「え?自己防衛の為ですけれど?」

 ワァ…なんのだろう。

 笑顔で言った縁樹に七海は本能的な危機感を薄っすらと感じた。
 いっくぞー!と椋の掛け声が聞こえるのを見ながら、先ほど覚えた危機感に従って七海も縁樹同様後ろへと下がる。
 勢い良く振られる椋の腕。勢い良く放り投げられるボーリングの球。

 ただし行き先は後ろだったが。

「ちょっ…!おま、危ねぇよ馬鹿!」
「後ろに飛ばすな後ろに!」
 そのボールは丁度後ろに居た樹と海月の足元少し前にガンッと盛大な音を立てて転がった。
 二人にしてみれば普通に待機スペースに居ただけなのに良い迷惑である。
「ったく、ボールが勝手に飛んでったっちゅーねん」
 俺の所為ちゃうわとブツブツと文句を言いながら、気を取り直してボールを投げる。
 今度は後ろに飛ぶ事もなく、真っ直ぐにレーンを滑ってピンを弾く。
 ストライクにはならなかったが残り1本のみと言う好投。
 だがその1本というのが中々悔しかったりもするのがボーリングである。
「あーと一本!あーと一本!」
「っしゃ、任しとき!」
 そろそろボールが戻ってくる頃だろう、と椋がじーっとボールの返還口を見る。
 じーっと見る。
 じーっと見る。
「…戻ってこねーな」
「…詰まった?」
「…いや、詰まることはないでしょう。引っ掛かったんだと」
「何してんのむーくー」

「うっさいわ!俺の所為ちゃうしッ、ええから外野は黙っとき!」

 待てども待てども戻ってこないボール。
 さっさと投げろとばかりにレーンに佇むピン。
 なんかもう普通に休息モードに入ってる待機組。

「…すんませーん、ボールが戻って来んのやけど店員さーん」

 根負けしたのは椋だった。
 近くに居た店員を呼ぶと、店員はハーイと一声。
 状況を聞くとレーンの間をタタッと小走りに奥へと入っていった。
「あ、ボール戻ってきた」
「引っ掛かってたんでしょうかねぇ…やっぱり」
 店員が奥へと消えて暫く、ボールは何事も無かったかのようにガコンと音を立てて戻って来た。
 そして消えた店員はどこから戻ってくるのだろうと縁樹が首を傾げていると。
「…へー、あっちから帰って来るんだ」
 館内隅にあった扉のような所から出てくる先程の店員を見つけて海月が声をあげる。
 縁樹も、七海もそちらに目をやれば納得する様に頷いた。
「んじゃ、ボールも戻ってきたしさっさと投げれー椋っこー」
「あいよ」
 樹が声を掛けると、ほな行きますかと椋が再びボールを投げる。
 ゴンッと威勢の良い音を立てピンが倒れる。
 っしゃ、スペア!とガッツポーズ。
 意気揚々と戻ってきた所、入れ違いに投球準備に入る海月とハイタッチを交わす。
「じゃー俺も椋に負けないように投げるとしますか…って」
 海月がふと首を捻る。
 皆もどうしたのかと首を傾げる。
「……なぁ、椋って玉16ポンドだよな」
「ん?あぁ、そうやけど?」
 それがどーしたん。
「いや、玉がないなーと」
 レーンにはピンが整然と並べられ、館内の照明にレーンは綺麗に光っている。
 ボールの返還口は二股に分かれているが、今回2レーン取っているため自分達以外に他の人の玉がある訳でもない。
「俺と樹は15ポンドでちゃんと2つあるけど16ポンドがないなーって」
「……」


「店員さーん、ごめんなさいもう一回お願いしまーす」


 若干静まり返った所、七海がすみませーんと手を上げる。
 片隅ではまた椋が何でや、何で俺の時ばっか…と椅子にのの字を書いていた。

 やってきた店員さんの苦笑いには、この際見なかった事にしようと誰ともなく思ったのは…まぁ、きっと仕方が無いのだろう。
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